ニーチャバンガの要件と効果について,争いがある。
条件:
①減衰している星のディスポジターが,月またはラグナからみてケンドラにある
②減衰している星が高揚する星座のL(例:金星減衰の場合は木星)が,月またはラグナからみてケンドラにある
③減衰している星にアスペクトバックがある
④減衰している星のディスポジターが高揚し(例:太陽減衰の場合は土星),月またはラグナからみてケンドラにある
(以上,デフォー②295頁)
これに,
⑤減衰している星が高揚している星とコンジャクトしているとき(メータ③434頁)
⑥減衰している星に星座交換が成立している場合(ボニー㉕の前文)
を加える論者,⑤についてアスペクトでも可とする論者もいる。
チャラクc26の335頁では下記のとおりである。
・①,②,③,⑥は上に同じ
・減衰している星が,高揚する星とコンジャクトまたはアスペクトしているとき
・減衰している星同士がアスペクトしている場合
効果:
減衰がキャンセルされる。しかし,
A 多少マシになるだけという説(デフォー②295頁,ボニー㉕の前文もデフォーを援用)
B 高揚と同じ効果,ただし初期に難ありという説(メータ③434頁)
C 良い結果を生む,またはラージャヨガとなる(チャラクc26の335頁)
がある。
【私見】
上記①②の要件が緩すぎることから考えると,多数のニーチャバンガがない限り,Aが妥当と思う。
なお,D9での状態も参照する必要があろう。
ヴィパリタの要件と効果について,定義も含め混乱がある。
【メータ③435頁】
条件:
6L:ドシュタナに在住し,6Hに凶星の影響がある場合(ハーシャヨガ)
8L:ドシュタナに在住する場合(サララヨガ。なぜか凶星の条件がなくなっている)
12L:ドシュタナに在住し,12Hに凶星の影響がある場合(ヴィマラヨガ)
以上の場合は,幸運が訪れる。
・3,6,8,12L同士がコンジャクトしている場合は吉(メータ③14頁)。
【チャラクc26の307頁】
6L:8または12Hに在住(ハーシャヨガ)
8L:6または12Hに在住(サララヨガ)
12L:6または8Hに在住(ヴィマラヨガ)
以上の場合は,関係するダシャー時に,ステータスの向上,名声,収入をもたらす,とする。凶星の影響の要件は記載されていない。
【ラスc25の19頁等】
「ドシュタナL同士が関連するとヴィパリタヨガ成立する。例えば,6Lと12Lがコンジャクトすると,敵が損失を被り,本人が利益を得る。この組み合わせがドシュタナ(3,6,8,12H)で起こるとヴィパリタラージャヨガの結果となる」とあり,2種類あるようである。
【デフォー②299頁】
条件:
少なくとも2つのドシュタナ支配星がドシュタナに在住。ただし,星座交換にはなっていない場合。
効果:
突然,期待しないような上昇がおこる。なお,星座交換が成立している場合は,初期にストレスフルなイベントがあったあと良い効果をもたらす,とある(ヴィパリタとは呼ばないだけで,吉にはなる)。
【フローリー⑤153頁】
条件:
6,8,12Lの「すべてが」ドシュタナで結合している場合。
【パタカ⑰79頁など】
条件:
8Lの項目では,8Lがドシュタナに在住すれば吉かのように書いてあるが,12Lの項目では,12L+6L+8Lだと「パーフェクトな」ヴィパリタになる,とも書かれており,フローリーの見解に近いのかも。
【パタルn12の257頁】
条件:
・ドシュタナLが「すべて」ドシュタナに在住する。または,それらが全部自室にあり,ドシュタナL間のみで相互アスペクトがある場合(デーバケララムおよびウッタラカラムリタから引用)。ほかの星からアスペクトなどがあった場合は無効となり,部分的な成立はないとしている。
・ただし,パラディピカから,
①6Hに凶星の影響があり,6Lがドシュタナにいる場合をハーシュヨガ
②8Hの凶星の影響があり,8Lがドシュタナにいる場合をサララヨガ
③12Hに凶星の影響があり,12Lがドシュタナにいる場合をヴィマラヨガ
も紹介。厳密なヴィパリタは成立しないが上記①~③が成立し幸福に生きている事例も紹介している。
効果は,「突然の期待しない上昇。しかし,長くは続かない」とある。
【私見】
①厳密な意味でのヴィパリタ(ドシュタナLが「すべて」ドシュタナに在住)は,ほとんど成立する余地がない。
②「6L敵が悪い部屋にいると本人に利益」というのは論理的である。よって,
・端的にドシュタナLがドシュタナにいるだけでまずは吉(もっとも緩いヴィパリタ)
・これに凶星の影響が加わればさらに吉
・ほかのドシュタナLでもそうあればさらに良し(狭義のヴィパリタ)
というのが結論だろうか。
【BPHS39章19,20節】
・3,6,8室に在住している星が減衰し,1Lが高揚または自室にあり,かつ1Hにアスペクトバック
・3,6,8室のいずれかのLが減衰またはコンバーストまたは敵対星座にあり,1Lが高揚または自室にあり,かつ1Hにアスペクトバック
すると,ラージャヨガ=吉
【メータ③318頁】
・3,6,8L減衰または3,6,8在住惑星減衰のダシャーは吉とするパラシャラの見解を紹介。なお同書435頁では,「3,6,8,12Lが減衰していた場合ラージャヨガ」とするKNラオ氏の見解を紹介。12Lが加わっている。322頁では,「3,6,8,12在住惑星減衰は吉」とするパラシャラの見解を紹介。やはり12在住が加わっている。
※なお,6室支配星が弱い=敵が弱い=吉,なので,これを例外則と表現する必要がないのかもしれない。実際,6L減衰かつ10L高揚だと,敵が弱くなり打ち勝つ,ジャバヨガとなる(ラーマン⑭ 85頁)。
【j4 KNラオ110頁】
3L減衰だがガンダーンダにいる事例で例外則は適用しないとしている。※例外則も所詮ひとつの考慮要素に過ぎないようだ。
木星は12Hのカーラカであり,在住は例外的に吉となる。
(Bhavartha Ratnakara 8章6節。ナイキ④313頁)
もともとヨーガカーラカになりうるが,
【⑭ラーマン 210頁】
ラーフが5室にあり,土星のナヴァムシャにはいないとき,バフプトラヨガとなり,相当たくさんの子供に恵まれる
意外にきっちり要件を記述している本は少ない。
【チャラクc26の336頁】
・10Hがケンドラまたはトリコーナで4つの星とコンジャクト
・月が土星のドレッカナにあり火星と土星のアスペを受けている
・月が火星のナヴァムシャにあり土星のアスペを受けている
・月のディスポジターが,土星のみのアスペを受けている
・月のディスポジターが,ひとつの部屋に在住する残りの惑星からのアスペを受けている(※月の対向に惑星集中の意?)
・木星が9Hに在住し,木星とラグナ,月すべてが土星のアスペクトを受けている。
以上を,いくつかの例として挙げている(網羅はしていないことを前提にした記述となっている)。効果は,世俗の事柄を放棄する。